大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

大阪地方裁判所 昭和49年(ワ)5398号 判決 1976年10月28日

原告

斉藤町子

被告

萬國交通株式会社

主文

一  被告は原告に対し金一七五万九二五五円およびこれに対する昭和四七年一〇月二三日から支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。

二  原告のその余の請求を棄却する。

三  訴訟費用はこれを五分し、その四を原告の負担とし、その余を被告の負担とする。

四  この判決は一項にかぎり仮に執行することができる。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  原告

1  被告は原告に対し金九四六万二六七七円およびこれに対する昭和四七年一〇月二三日から支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。

2  訴訟費用は被告の負担とする。

3  仮執行宣言

二  被告

1  原告の請求を棄却する。

2  訴訟費用は原告の負担とする。

第二請求原因

一  事故

原告はつぎの交通事故により傷害を被つた。

1  日時 昭和四七年一〇月二二日午前二時五分ころ

2  場所 大阪市住吉区粉浜本町二丁目三二番地先交差点

3  加害車 普通乗用自動車(タクシー)

運転者 訴外蔦谷満夫

4  態様 東から西へ横断歩行中の被害者と北進加害車が衝突

二  責任原因

運行供用者責任(自賠法三条)

被告は加害車を所有し、自己のため運行の用に供していた。

三  損害

1  傷害、治療経過等

(一) 傷害

脳挫傷、左半身麻痺、左腓骨々折、骨盤骨折、脳外傷後痴呆

(二) 治療経過

一六九日入院のうち、昭和四八年四月八日から同年一一月一七日迄通院

(三) 後遺症

左手指のしびれ、左腕神経叢部腫脹圧痛

2  損害額

(1) 休業損害 金三一〇万円

原告は事故当時二三歳で洋酒喫茶店にホステスとして勤務し、一カ月金一〇万円の収入を得ていたが、前記受傷により二年七カ月間休業を余儀なくされ、その間右金額の収入を失つた。

(2) 後遺障害による逸失利益 金一一六万二六七七円

原告は前記後遺障害のためその労働能力を五七パーセント喪失するに至つたが、それは向う二三年間継続し、その間右労働能力喪失率に応じた減収を招くもの(一、二〇〇〇×二三×〇・五×〇・五七)と考えられるから、この逸失利益を年別のホフマン式により年五分の割合による中間利息を控除して算定すると右金額となる。

(3) 慰藉料 金五〇〇万円

(4) 弁護士費用 金二〇万円

四  結論

よつて、原告は被告に対し本件事故に基づく損害の賠償として金九四六万二六七七円およびこれに対する事故翌日の昭和四七年一〇月二三日から支払ずみまで年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。

第三答弁

請求原因一項は認める。

同二項は認める。

同三項1は不知、同2は争う。

第四抗弁

一  免責、過失相殺

加害車(訴外蔦谷)は交差点手前約三〇メートルの地点で対面信号が黄色に変るのを認めたが、道交法施行令二条一項に従い、そのまま交差点を通過しようとしたところ、原告は対面信号が赤であるのに道路中央分離帯から加害車の進路上へ走つて横断しようとしたものである。

右の次第で、同訴外人には何らの過失もない。

二  弁済

被告は原告につぎのとおり支払つている。

治療費 金四九万四八一〇円

附添看護費 金二一万七五八〇円

入院雑費 金一万五〇〇〇円

休業補償費 金一五万円

第五答弁

抗弁一は争う。同二は認める。

理由

一  事故

請求原因一項の事実は当事者間に争いがない。

二  責任原因

1  運行供用者責任

請求原因二項1の事実は当事者間に争いがなく、後記のとおり免責の抗弁も認められないから、被告は自賠法三条により本件事故による原告の損害を賠償する責任がある。

2  免責

成立に争いのない甲七号証、証人井伊、同城之内、同小山の各証言、原告本人尋問の結果によると次の事実が認められる。

本件事故現場は、車道幅員一八・四メートルの南北道路(中央に幅員一メートルの中央分離帯がある。片側幅員は八・七メートルで三車線である)と東西道路(交差点東側で幅員六・五メートル、西側で同五・五メートル)の交差点で、信号機により交通整理されている。附近の制限時速は五〇キロメートルである。

訴外蔦谷は加害車を時速約七〇キロで運転して北進中、交差点手前約三〇メートルに至つた際、対面信号が黄に変わるのを認めたが(黄の表示は四秒続きその後交差点内の信号は全赤となる)、そのまま交差点を直進すべく約二七メートル進行した際、右前方約一〇メートルの地点に、中央分離帯から西へ向け小走りに道路を横断しようとする原告を発見し急制動するも及ばず原告と衝突のうえ、更に約二三メートル進行して停車した。

原告は、先に交差点を横断した友人が交差点南西角附近で止めたタクシーに乗車するため、訴外城之内らと青信号に従い交差点南側横断歩道を東から西へ横断中、途中で信号が赤に変わつたのでいつたんは中央分離帯附近で待機していたが、信号が青に変らないうちに道路を横断しようとしたものである。

以上の事実が認められ、これに反する証人城之内の証言、原告本人尋問の結果は措信しない。

右事実によると、本件事故は、訴外蔦谷の制限速度違反、前方不注意、信号無視(制限時速内で走行していれば交差点手前で停止するのは容易であるから道交法施行令二条には必ずしも該当しない。)等の過失によつて発生したものと認めるのが相当であるから、その余の点について判断する迄もなく被告の免責の抗弁は理由がない。

三  損害

1  傷害、治療経過等

原告本人尋問の結果とこれにより成立を認める甲二、五号証により請求原因三項1の事実を認める。但し、原告の後遺症状固定は昭和四八年一一月頃である。

(1)  休業損害 金一一五万八六〇〇円

成立に争いのない乙一号証の一ないし三、原告本人尋問の結果によれば、原告は事故当時二三歳で、洋酒喫茶店にホステスとして勤務して、事故直前三カ月間の実績によれば、一カ月平均金九万六五五〇円の収入を得ていたが本件事故後稼働していないことが認められる。

ところで、さきに認定した原告の被つた傷害の部位、程度、治療の経過、期間、病状の推移、その年齢および従事していた職務の種類、内容等によれば、原告の右認定休業のうち本件事故と相当因果関係の範囲内にあるそれは、昭和四七年一〇月二二日から一年の間であると認めるのが相当であり、これによれば原告の本件事故による休業損害は金一一五万八六〇〇円となる。

(2)  後遺障害による逸失利益 金七五万八四一九円

さきに認定した原告の従事していた職務の種類、内容およびその後遺障害の部位、程度等によれば、原告は前認定後遺障害のためその労働能力を一五パーセント喪失し、それは昭和四八年一一月から少くとも五年間継続するものと認められるから、原告のこの逸失利益を前記事故前の収入をもとに年別のホフマン式により年五分の割合による中間利息を控除して算定すると右金額となる。

(3)  慰藉料 金一五〇万円

本件事故の態様、原告の被つた傷害の部位、程度、治療の経過、期間、後遺障害の内容、程度、その他諸般の事情によれば、原告の慰藉料額は金一五〇万円とするのが相当である。

四  過失相殺

前認定事実によれば、本件事故の発生については、原告にも信号無視の過失が認められるところ、前認定訴外蔦谷の過失の程度等諸般の事情を考慮すると、過失相殺として原告の損害の四〇パーセントを減するのが相当であると認められる。

そうすると、被告において支払わなければならない損害額は、前項の合計金三四一万七〇一九円に本訴請求外損害であることにつき当事者間に争いのない治療費、入院雑費、付添看護費金七二万七三九〇円を加えた総計金四一四万四四〇九円の六〇パーセントに相当する金二四八万六六四五円ということができる。

五  損害の填補

被告の抗弁二は当事者間に争いがない。

よつて、原告の前記損害額から右填補分を差引くと、残損害額は金一六〇万九二五五円となる。

六  弁護士費用

本件事案の内容、審理経過、本訴請求額および認容額等に照らすと、原告が被告に対し賠償を求め得る弁護士費用の額は金一五万円とするのが相当であると認められる。

七  結論

よつて、被告は原告に対し金一七五万九二五五円およびこれに対する事故翌日の昭和四七年一〇月二三日から支払ずみまで年五分の割合による遅延損害金を支払う義務があり、原告の本訴請求は右の限度で正当であるからこれを認容し、その余の請求は理由がないから棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法八九条、九二条、仮執行の宣言につき同法一九六条を各適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 蒲原範明)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例